ミケランジェロ ハンドテスト
僕は2015年9月末でシンガポールを去ることを決めた。
これ以上シンガポールに無期懲役でいると想像すると、本当に発狂してしまいそうだが、
完全にぶっ壊れる前に撤退すること自主的に選んだ。
シンガポールは暮らしやすいとか言われているが、実態は真逆だ。
僕の周りではけっこう多くの人が精神的に疲弊している。
メンタルがめちゃめちゃ強そうな人が実は抗鬱剤を飲んでいたりする。
僕よりもヤバい状況になっている人がたくさんいることがわかった。
僕はちょっと集中力が欠如してしまっているぐらいで、他の人に比べればまだマシだ。
実は、みんな多かれ少なかれ何かしらの自分では解決できない重要な課題を抱えているのだ。
そしてそのモヤモヤを解消するような手段がなかなか見つかりにくい。
人生というのは解決不可能なことばかりで、これを考えれば考えるほど詰んでいると思ってしまうのだろうか。
30歳を過ぎて感じる「人生における詰み感」は解決不可能な因子からくる。
これは自力では解決できないので、友人に元気づけてもらうという対症療法しかない。
多くの人がそのような「人生における詰み感」を感じているのだろうが、
みなそれを表面に出すことはない。
特に日本人は自分の内情を誰かに話すことを避ける。 どうしても自分の中で問題を抱えてしまう。
外国では助けてくれるひとが少ない。みな自分が生き延びることで手一杯だ。
政府も助けてはくれない。
外国人労働者というのは雇用の調節弁であり、不要ならば容赦なく捨てられる。
モノとして扱われる。
この国でいる日本人はその点を十分に理解してこの国に来たのだが、90%の人が3年〜5年したら日本に帰る。
外国で住むというのは簡単ではないし、シンガポールで住み続けることができるのは本当にごく一部の人に限られる。
外国で住むということは簡単ではない。
特にシンガポールでは男性は24時間カネが増えるか減るかの心配をしないといけない。
シンガポールでは経済戦争をしているようなものだ。そしてビジネスマンは兵士である。
カネを奪ったら勝利の雄叫びを上げ、カネを奪われたら怒り狂う。
日本以外は、特に国際的なビジネスは契約が全てだ。
そして契約を結ぶ前も、契約を結んだ後もほぼ全てのフェーズで交渉や調整が付きまとう。
日本での商取引とは全く違う。
物事を進める前には見えない瑕疵やリスクがたくさん存在する。
それを認識できるようになるのはトラブルが発生した場合のみだ。
それをうまく管理するために常に気を張った状態で取り組まないといけない。
そして利益を確保するための努力は、利益が確定するまで続く。
それが達成できたとしても「当たり前」として扱われる。褒められることはない。
うまくいったと思った次の瞬間には、もっと利益率をあげろという指令があるだけだ。
カネをじゃんじゃん使うことに全く躊躇がない。
カネを使うことが仕事で、社内ルールを次から次へと作って官僚ごっこを楽しんでいる。
利益を$1でも多く稼ぐことが求められるし、少しでもミスればゴミとして扱われる。
時より聞こえてくる誰かが解雇されたというニュースに「明日は我が身」として戦々恐々とする。
そして仕事が終われば蟻の巣のようなルームシェアでひっそりと暮らす。
これでも僕はまだ恵まれている方だ。
シンガポールではS PASS(月給SGD3,000前後)で働く日本人男性もいる。
彼らの生活は僕よりも厳しい。本当に犬のような扱いで生きている。
だからシンガポール撤退を決めた時、多くの友人が「もったいない」と再考するようにいってきた。
僕は冗談じゃないと思い、本当に「もったいない」こととは資本家どもに人生を盗まれることだと言い返している。
いつまで僕はこんなムショみたいな暮らしをして、
ホーカーで臭い飯食いながら蟻族労働者としてこの国で惨めに暮らさないといけないのか。
そんなことをするために生まれてきたのではない。
この感覚がズレていると思うのなら資本家に直接聞いてみるがいい。
労働者とは何なのか。「永遠に搾取される生き物」と回答するだろう。
投資銀行のトレーダーでも、コンサルタントでも、国際弁護士であっても労働者である以上はこの宿命からは逃れられない。
どんなに年収を上げようが、会社から解雇されたらその瞬間から人生が狂う。
そんな人を何人も見てきた。
特にシンガポールは資本家の天国だ。世界中から資本家がやってくる。
彼らは圧倒的パワーで全てを奪っていく。
僕はこの経済戦争では勝ち目がないことを悟り、早々に撤退することを決めた。
そんな僕がシンガポールでやり残したことがあるとすれば、僕のリモート義体を残すことだ。
シンガポール向けの輸出ビジネスをする際、誰かが輸入者である必要がある。
カネも絡むので僕を裏切らない人間を選定する必要がある。
僕の指示に従い的確に業務を遂行してもらう必要がある。
以前にゴーストハックまで持ち込んだと思った女性がいるが、 まだまだ100%制御するまでのところまで至っていない。
まだ僕の命令に逆らおうとするところがある。その女性をもっと強く支配する必要があった。
僕が支持した通りにこの国のマーケットに最良の一手を仕掛ける傀儡が必要だったのだ。
この対象女性をより強力な方法でゴーストハックしなければならない。
やり方はちょっと難易度が高いのだが、まずは対象女性を素敵なレストランに誘う。
おすすめはClub Streetのスペインバルだ。価格も安く週末でも6:00pm頃なら予約なしでも入れる。
Drinks & co. cafeはTapasも美味しく、店内に100種類を超えるワインやハードリカーがほぼ免税店並みの価格で飲める。
LOS PRIMOSも悪くない選択肢だ。
さて、料理をつまみながらやるべきことは、ギリシャ神話に関する会話だ。
ギリシャ神話に関する話題は必ずロマンチックな会話として成立する。
日本人男性はこのロマンチックな会話は非常に苦手だ。なぜなら神話に関する知識が欠如しているからだ。神を信じていない。日本書紀では天照大御神が日本を創造したという歴史的事実が明記されているのに、何を考えているのか。
確かに僕も昔はロマンチックな会話が全然できなかった。
これはたくさんの女性で失敗しながら学ぶしかない。
そしていわゆるPick Up Lineなどの記憶して使う決め台詞を使ってはならない。
Pick Up Lineとは非モテの誇大妄想狂が作り出した幻想で、本当のPick Up Artistならば、そのようなロマンチックな会話は息を吐くかのごとくできてしまう。
相手の感情をただ口にするだけの行為なのだ。
そしてギリシャ神話、つまり歴史というのは未来を切り開く最強のツールなのである。
また大前提として、心と心だけで繋がっている状態をキープする。
女性はそれ以上の関係を求めてくるが、それに対しては必ずオアズケを食らわす。
僕自身が禁断の果実として女性の前で存在し続けることが重要なのだ。
そして、今後はどうしたいかの判断は女性に委ねる。
僕を生かすも殺すも君次第だよ。
僕たちはこれ以上の関係になることはないのだけど、確かに僕には君の手助けが必要なんだ。
そんな感じで甘く囁くと、女性は僕を助ければご褒美がもらえると勝手に錯覚する。
そして絶妙のタイミングでミケランジェロ ハンドテストを繰り出すのだ。
そして、耳元でこう囁くのだ。
「最後の審判を下すのは君だ。」
そして女性は僕の輸出ビジネスを手伝うことに合意した。
このミケランジェロ ハンドテストの最中は、必ずミケランジェロのオーラと対話しないといけない。
「やあ、ミケランジェロ、あの世でパーティーでもやっているのかい?
お察しの通り、この世は厭なことばかりだよ。
どいつもこいつも凡人で、僕の書いたこの崇高なブログを全然認めようとしない。
そればかりか役に立たない運命やら偽の恋愛論を信じている始末だよ。
そんなことよりアポを優先するからさ。
これじゃ日本人の恋愛ルネッサンスはあと500年はかかるだろうね。やれやれ。」
このミケランジェロとの対話を通して、僕と彼は念の世界で強く結びつき、一体と化す。
オーラ貸借契約の成立だ。
その瞬間から僕の身体をミケランジェロのオーラが包み込む。
これはナンパ大国イタリアでアダムとイブの時代からも受け継がれてきたナンパ奥義の一つである。
僕はこれを極めるために、システィナ礼拝堂に行き、ミケランジェロのオーラを少し分けてもらった。
僕の体内にはミケランジェロのオーラが幾ばくか封印されているので、この奥義を使いこなすことができるのだ。
この奥義の取得のために莫大な費用をかけてバチカン市国に潜伏した。
電車のチケットに刻印がないとして車掌から50ユーロを強奪されたこともあった。
残念ながら並みのナンパ師ではバチカン美術館に行くことさえ困難だ。
日本円の為替レートも暴落しているし、例の隠し扉を見つけないとシスティナ礼拝堂に到達できないのに、そんなことはガイドブックに書いてない。
ほとんどの場合、ハトのエサ詐欺や、ミサンガ詐欺にあって、資金が底をつき、強制帰国を余儀なくされる。
このようにミケランジェロ ハンドテストを習得するには非常に大きなリスクが伴う。
日本のほぼ全てのナンパ師はこのミケランジェロ ハンドテストを使うことは不可能だ。
ミケランジェロ ハンドテストが上手く炸裂すると、
もう完全にその対象女性は僕の傀儡として生き続けるであろう。
100%獲得不可能な僕というご褒美を夢見ながら。
知らんけど。